病気や加齢などが原因で介護が必要となった場合、在宅で心身の機能の維持、回復を図るためのリハビリとして「訪問リハビリ」と「通所リハビリ」があります。
それぞれのリハビリについては、社会保険である医療保険あるいは介護保険の対象となるのですが、どちらが適用されるかは、リハビリを受ける方の年齢や介護が必要となった原因などによって異なります。
これは利用できるリハビリの内容にも影響する重要なポイントなのですが、わかりにくいのも事実です。
ここでは「訪問リハビリ」・「通所リハビリ」とはどのようなものなのか、そして「医療保険」・「介護保険」のどちらが適用されるのかについて確認していきましょう。
目次
訪問リハビリとは
訪問リハビリとは、主治医によって訪問でのリハビリが必要と判断された人を対象に、看護師や理学療法士などが自宅を訪問し、主治医の指示にもとづいて療養や診療の補助を行うものです。内容
訪問リハビリでは、主治医の指示にもとづき、必要に応じて理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった専門資格を持った専門家が以下のようなリハビリやアドバイスを利用者の自宅で行います。■日常生活動作のリハビリ
食事や着替え、排泄といった日常生活における動作や歩行訓練など。
■身体機能のリハビリ
筋肉や関節などの機能を維持、回復するための運動など。
■介護に関するアドバイス
介護を行う家族などへの介助方法や介護用品、介護費用などに対するアドバイスなど。
メリットとデメリット
訪問リハビリには、以下のようなメリット・デメリットがあります。
【メリット】
外出が難しい利用者も、普段生活している環境の中でリハビリを受けることができる
マンツーマンでサービスを受けることができる
外出が難しい利用者も、普段生活している環境の中でリハビリを受けることができる
マンツーマンでサービスを受けることができる
【デメリット】
通所リハビリと比べて利用できる施設やリハビリ機器などが限られる
自宅でリハビリを受けられる環境を整える必要がある
通所リハビリと比べて利用できる施設やリハビリ機器などが限られる
自宅でリハビリを受けられる環境を整える必要がある
通所リハビリ(デイケア)とは
通所リハビリとは、老人保健施設や病院、診療所などに通院・通所してリハビリを受けるサービスのことで、「デイケア」とも呼ばれます。その目的は利用者が自立して生活できることであり、身体機能の向上などのためのリハビリを行います。
内容
通所リハビリでは、主治医の指示にもとづき、必要に応じて理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった資格を持った専門家が以下のようなリハビリを行います。訪問リハビリと同じような内容ですが、より施設や機器の充実した環境でリハビリを受けることができます。
■日常生活動作のリハビリ
食事や着替え、排泄といった日常生活における動作や歩行訓練など。
■身体機能のリハビリ
筋肉や関節などの機能を維持、回復するための運動など。
メリットとデメリット
通所リハビリには、以下のようなメリット・デメリットがあります。
【メリット】
施設、機器が充実しているため、専門的なリハビリが受けることができる
体調が急変したときにも、すぐに処置が受けることができる
送迎、食事、入浴などリハビリ以外のサービスも充実している
他の利用者との交流ができる
介護を行う家族の負担軽減となる
施設、機器が充実しているため、専門的なリハビリが受けることができる
体調が急変したときにも、すぐに処置が受けることができる
送迎、食事、入浴などリハビリ以外のサービスも充実している
他の利用者との交流ができる
介護を行う家族の負担軽減となる
【デメリット】
訪問リハビリと比べてマンツーマンでの対応は難しい場合もある
他の利用者との交流が利用者にとってはストレスとなることもある
訪問リハビリと比べてマンツーマンでの対応は難しい場合もある
他の利用者との交流が利用者にとってはストレスとなることもある
通所介護(デイサービス)との違い
通所リハビリ(デイケア)と内容の似たサービスとして、「通所介護(デイサービス)」があります。どちらも介護や日常生活・身体機能の訓練などを行うという点では共通していますが、目的に違いがあります。
まず通所リハビリでは医師の指示にもとづくリバビリが主な目的です。
一方の通所介護では、リハビリも行われますが医師による指示はなく、レクリエーションなどを取り入れた日常生活の支援や孤立予防、介護を行う家族の負担軽減などが主な目的となっています。
どちらを利用するかは目的に応じて選択することになりますが、場合によっては両方を利用することも可能です。
介護保険と医療保険どちらの対象になるのか
訪問リハビリ、通所リハビリを受けるためには利用料が必要となりますが、介護保険あるいは医療保険の対象となるため、その負担は軽減されます。どちらの保険制度の対象となるかは、利用者の年齢や要介護状態となった原因によって、以下のように決まります。
【利用者の年齢:40歳未満の場合】
■厚生労働大臣が定める疾病等が原因の場合
医療保険の対象:週4日以上、複数回の利用が可能
■厚生労働大臣が定める疾病等以外が原因の場合
医療保険の対象:週3日までの利用が可能
■厚生労働大臣が定める疾病等が原因の場合
医療保険の対象:週4日以上、複数回の利用が可能
■厚生労働大臣が定める疾病等以外が原因の場合
医療保険の対象:週3日までの利用が可能
【利用者の年齢:40〜64歳の場合】
■厚生労働大臣が定める疾病等が原因の場合
医療保険の対象:週4日以上、複数回の利用が可能
■介護保険における特定疾病、厚生労働大臣が定める疾病等の両方に該当しない原因の場合
医療保険の対象:週3日までの利用が可能
■介護保険における特定疾病であり、かつ厚生労働大臣が定める疾病等以外が原因の場合
介護保険の対象:ケアプランにもとづいて利用
■厚生労働大臣が定める疾病等が原因の場合
医療保険の対象:週4日以上、複数回の利用が可能
■介護保険における特定疾病、厚生労働大臣が定める疾病等の両方に該当しない原因の場合
医療保険の対象:週3日までの利用が可能
■介護保険における特定疾病であり、かつ厚生労働大臣が定める疾病等以外が原因の場合
介護保険の対象:ケアプランにもとづいて利用
【利用者の年齢:65歳以上の場合】
■厚生労働大臣が定める疾病等が原因の場合
医療保険の対象:週4日以上、複数回の利用が可能
■厚生労働大臣が定める疾病等以外が原因の場合
介護保険の対象:ケアプランにもとづいて利用
■厚生労働大臣が定める疾病等が原因の場合
医療保険の対象:週4日以上、複数回の利用が可能
■厚生労働大臣が定める疾病等以外が原因の場合
介護保険の対象:ケアプランにもとづいて利用
厚生労働大臣が定める疾病等一覧
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって、生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る)
- 多系統萎縮症(線条体黒質変性症,オリーブ矯小脳萎縮症 及びシャイ・ドレーガー症候群
- プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソーゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋委縮症
- 球脊髄性筋委縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頸髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態
介護保険の特定疾病一覧
- 末期のがん (医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靭帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老病
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
参考:訪問看護相談支援センターかごしま https://k-houkan.net/user/hoken/
医療保険と介護保険のリハビリを併用できる?
介護保険によるリハビリと医療保険によるリハビリは、原則併用できないことになっています。ただし、上記の厚生労働大臣が定める疾病等(いわゆる難病)に該当する場合には、主治医や市町村の許可を得た上で、併用が認められる場合もあります。
利用目的に応じて適切なサービスを選択する
訪問リハビリと通所リハビリにはそれぞれメリット・デメリットがあり、利用目的に応じて適切なサービスを選択することが重要です。その際には介護保険と医療保険のどちらが適用されるかによって受けられるサービスの内容にも影響してくるため、利用者の状況でどの制度の対象となるのかを把握しておくようにしましょう。