公的な医療保険の給付金にはどのようなものがあり、どのような場面で給付対象になるかご存じでしょうか?
実は公的な医療保険は基本的に現金の給付ではなく「現物給付」です。現物給付と聞くと何かをもらえそうな響きがありますが、実際には医療サービスが受けられるという意味です。
公的な医療保険の対象や対象者が誰なのかを知ることは民間の医療保険を選ぶ際にも役立ちますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
公的な医療保険の種類
具体的に公的な医療保険の対象となる事例を細かく見てみましょう。まず、病気やケガをしたときには療養の給付、入院時食事療養費、訪問看護療養費などの現物給付を受けることができます。これらは特に手続きは必要なく、被保険者証で治療を受けるときに給付の対象となります。
立替払いとなるのは高額療養費や高額介護合算療養費で、一定額を超えた医療費を後から現金で受け取れるものです。また、緊急時の移送には移送費、療養のために休んだ場合は傷病手当金がそれぞれ給付対象となります。
出産の際にも公的な医療保険が適用され、出産育児一時金と出産手当金が給付されます。それぞれの内容を以下にまとめました。
療養の給付
健康保険の被保険者が業務以外で病気やケガをしたときに、健康保険を扱っている病院や診療所に被保険者証を提出し一部負担金を支払うことにより診察、投薬、治療、手術、看護、入院などの療養を受けることができます。一部負担金の割合は、70歳未満は医療費の3割、70歳以上の被保険者は2割(70歳以上75歳未満の方で、昭和19年4月1日以前生まれの方は1割)(現役並み所得者は3割)となります。
入院時食事療養費
被保険者が病気やケガで保険医療機関に入院したときは、療養の給付とあわせて食事の給付が受けられます。入院期間中の食事の費用は、健康保険から支給される入院時食事療養費と入院患者が支払う標準負担額でまかなわれます。入院時食事療養費は、保険者(健康保険組合など)が医療機関に直接支払い、患者は標準負担額を支払うことになります。
入院時生活療養費
療養病床に入院する65歳以上の者の生活療養に要した費用について、保険給付として入院時生活療養費を支給されることとなりました。入院時生活療養費の額は、生活療養に要する平均的な額から、生活療養標準負担額を控除した額です。被扶養者の入院時生活療養の給付は、家族療養費として給付が行われます。
保険外併用療養費
健康保険では、保険が適用されない保険外診療があると保険が適用される診療も含めて、医療費の全額が自己負担となってしまいます。ただし、保険外診療を受ける場合でも、「評価療養」と「選定療養」については、保険診療との併用が認められており、診察、検査、投薬、入院料など通常の治療と共通する部分の費用は、一般の保険診療と同様に扱われます。
その部分については一部負担金を支払うこととなり、残りの額が「保険外併用療養費」として健康保険から給付されます。被扶養者の保険外併用療養費にかかる給付は、家族療養費として給付が行われます。
評価療養には、先進医療、適応外の医薬品の使用、適応外の医療機器の使用などがあります。選定療養は差額ベッド、歯科の金合金等、時間外診療、大病院の初診、180日以上の入院などです。
療養費
健康保険では現物給付が原則となっていますが、やむを得ない事情で、保険医療機関で保険診療を受けることができず、自費で受診したときなど特別な場合には、その費用の一部について療養費が支給されます。訪問看護療養費
自宅で療養している人が、かかりつけ医の指示により訪問看護師から必要な診療の補助を受けた場合、その費用が現物給付されます。訪問看護の基本利用料の率は、被保険者、被扶養者ともに3割となっており、残額が訪問看護療養費として支給されます。ちなみに、訪問看護療養費の基本利用料は、高額療養費の対象となります。
移送費
病気やケガで移動が困難な患者が、緊急的必要があり医師の指示で移送された場合は、移送費が現金給付として支給されます。移送費の額は、最も経済的な通常の経路および方法で移送された場合の額を上限とした実費です。なお、必要があって医師などの付添人が同乗した場合の医師の人件費は、療養費として支給されます。
高額療養費
重い疾病を患うなど、病院に長期入院したり治療が長引く場合には医療費が高額となります。そのため自己負担額が一定の金額を超えた場合に、医療費が還付される制度があります。ただし、保険外併用療養費の差額や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担分は対象外です。被保険者、被扶養者ともに同一月の自己負担限度額は年齢と所得に応じて算出されます。
また、同一月に同一世帯で21,000 円以上の自己負担が複数あるときは、これらを合算して限度額を超えた金額が支給されます。なお、同一人物が同一月に複数の医療機関にかかり、それぞれの自己負担額が21,000 円以上になった場合も同様です。
高額介護合算療養費
世帯内の同一の医療保険の加入者について、毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額を合計し、基準額を超えた場合に、その超えた金額を支給します。傷病手当金
傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。傷病手当金は、被保険者が病気やケガのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あった上で、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。ただし、休んだ期間について事業主から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を受けた場合には、傷病手当金は支給されません。
自分または自分と生計を一にする家族のために多額の医療費を支払った場合には、医療費控除を受けることができます。
ここで、年末調整や確定申告の際に医療費控除の対象となる金額は、実際に支払った医療費の合計額から「10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)」および「保険金などで補填される金額」を差し引いて計算します。
このときに注意しなければいけないのは、医療費から差し引く保険金等には傷病手当金や出産手当金は該当しないということです。課税額が減るため、還付される税金が増えることになりますので、知っておきたい知識です。
埋葬料および埋葬費
被保険者が亡くなったときは、埋葬を行う人に埋葬料または埋葬費が支給されます。出産育児一時金
出産育児一時金は、被保険者およびその被扶養者が出産されたときに申請すると、1児につき42万円が支給されるものです。なお、多胎児を出産された場合には、出産された胎児数分だけ支給されます。健康保険でいう出産とは、妊娠85日以後の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶をいいます。また、正常な出産、経済的事由による人工妊娠中絶は、健康保険による療養の給付の対象からは除かれますが、出産一時金の対象にはなります。
公的な医療保険の給付対象者
健康保険には保険の給付を受けられる対象者が被保険者と被扶養者に分かれています。被保険者は実際に健康保険に加入している人のことで、被扶養者は被保険者の配偶者や子どもなどで、被保険者に扶養されている人のことです。 被保険者と被扶養者では給付の種類が異なり、傷病手当金は被扶養者に対する給付はありません。
民間保険の重要性
公的な医療保険は意外に多いと感じるかもしれませんが、実際に家族の誰かが病気やケガで入院をした場合に、公的な医療保険だけでは十分とはいえません。世帯主が入院した場合は治療費が支給され、給料補償として傷病手当金も支給されますが、どちらも満額ではありません。不足分は貯蓄から取り崩すことになりますし、差額ベッド代が必要となることや、病院までのタクシー代、入院のために必要な日用品などを考えると思った以上の出費になります。家族が入院をした場合は傷病手当金が出ませんが、付き添いが必要になれば世帯主が働ける時間も減ります。
軽い病気やケガの場合は多額な費用とはなりませんが、うつ病などの精神疾患を罹患した場合は働けない期間の長くなる上に、その後に民間の医療保険に加入しようとしても審査は非常に通りにくくなります。民間の医療保険は年齢とともに保険料も上がるため、できるだけ早い時期に加入しておくべきでしょう。
また、自営業者の場合はそもそも傷病手当金がないため、働けない期間は全く収入が途絶えてしまうことにもなりかねません。
妊娠、出産にかかる費用も公的な医療保険の給付対象ではありますが、帝王切開となった場合などは給付金の範囲を超えることが多く、切迫流産などで入院日数が長くなることもあるため、民間の医療保険でカバーしておくと安心です。
給付内容を理解してあなたに最適な選択を
公的な医療保険は自己負担額を抑えることができますが、全額をカバーすることはできません。そのため、やはり民間の医療保険を上乗せしておく必要があります。もちろん環境はそれぞれ違いますので、備えておくべき入院日額も人によって異なりますが、主婦であっても日額5,000円、世帯主であれば10,000円は確保しておきたいところです。
自営業者は15,000円~20,000円くらいを考えておくといいです。 オリックス生命やメットライフ生命、アフラック、ソニー生命には割安な医療保険があるため、このタイミングで確認しておくといいでしょう。